K.COUNTRY HC-400

70年代後半~80年代前半モデルと思われるk.country HC-400のリペアのご依頼をいただきました。 大学を卒業されて20数年、その間実家の押し入れに仕舞い込んでおられたそうです。

とにかく普通に?弾けるようにして欲しいとのリクエスト。弦回りのtusq化、フレット打ち直し、ブリッジ補修等を行った結果、さすがにオール単板のjapan-vintageです。

その激鳴りは凄かったです。 ボディのSK・・・依頼主様のイニシャルなんですが、深くて目立つ傷を付けてしまった時にアクリルボードを切り出して貼り付けたものだそうです。

今回ははがすとSKの日焼けがくっきり残ってしまうのでそのままにしていますが、表板の傷を目立たないように補修する方法もありますので、補修をご希望する場合はできるだけ手を加えずにご相談ください。

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まずブリッジです。サドルがほとんど削り込まれ6弦には弦高を調整するためかボールエンドが仕込まれています。サドル溝は幅を拡げようとしたのか波打ったように削られ、サイドに2本の深い傷があります。そしてサドル本体は・・・ボンドで接着されていました(汗)

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サドルを取り除いた後の画像ですが、ボンドで接着されたサドルはルーターで削り取りました。

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2本の傷をローズウッドのパウダーとタイトボンドでパテを作り埋め込みました。 粗めにサンディングすると目立たなくなりました。

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サドル溝を一旦ローズウッドのパテで埋め込み、再度掘り返しています。

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ブリッジピン穴に弦の導入角度をつけるための加工を行いサンディングして仕上げた後、レモンオイルをたっぷり含ませました。

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フレットもローフレットを中心に、全般的にこのように摩耗しています。 指板も弦を押さえこんだ轍がローフレットを中心に点在しています。

これは指板をサンディングして消して行きます。

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フレットを抜き取り、指板をサンディングした後の状態です。 サンディングは単純に窪んだところだけを削っているのではなく、指板と同じRのついたウッドブロックを用いて全体を調整しながらの作業になります。また、フレット抜きは安易にやってしまうと指板の剥がれ、割れ、欠けを生じさせます。今回も、指板全体にレモンオイルを染み込ませ、ハンダごてで温めながら慎重に抜いて行きました。

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いきなりフレットが打ち込まれて磨きの工程です(汗) フレットベンダーで指板と同じRをフレットにつけ、各フレットごとに切り分けて行きます。今回の打ち込みは、ネックブロックまではハンマーを使ったのですが、ネックブロック以降ボディに乗っているフレットはプレスして打ち込んでいく専用工具を使用しました。 ネックバインディングがあるタイプの場合はバインディングにかからないようにフレットのタングをフレットタングニッパーで切り取ってから打ち込みます。

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溝にフィットしていないプラスチック製ナットが申し訳けなそうに付けられています。 当て木でコツンと叩いてやると簡単に外れました。

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ナットを外した直後です。 この後、残っている接着剤を数種類のナットファイル(ヤスリ)とマイクロチーゼル(極小ノミ)を使って取り除いていきます。 ヘッドの塗装面とナット溝との境に接着剤の後が白濁し帯状に残っていますが、 このままだと白濁した部分が目立ちますし溝幅も狭いことから、音質改善の効果も期待して白濁帯を消すように2mmほど溝を拡幅することにしました。ギター工房SoundRiver

ナット溝クリーニング後です。 溝も2mm拡幅しました。

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tusqで新たにナットを作成しました。 この後、スペーシングルールを使って弦溝位置を決めます。弦溝位置が決まれば弦の太さに応じたナット溝専用のヤスリを使ってとりあえず弦が収まる程度の溝を切って行きます。とりあえずなのは、この後に新たに作成するサドルで弦高をかなりシビアなところまで調整して、最後にナット溝で最終調整する必要があるからです。

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底面もネック側面もきっちりと収まっています。このきっちり感が良い音質につながります。

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またまた画像を撮り忘れてサドルも完成してしまっています(汗) オクターブチューニングを合わせたオフセットサドルです。


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